日本探偵小説三大奇書に数えられるのが、夢野久作(ゆめのきゅうさく)のドグラ・マグラです。
読めば精神に異常をきたすといった強烈なキャッチコピーが出るほどの小説ですが、実際のところはどうなのでしょう。
この作品は謎を考えることが楽しい人にはおすすめできると言えます。
ただ難解過ぎる内容ですので要約することも難しいですが、今回は一般的な解釈と共に、簡単なあらすじをご紹介します。
夢野久作「ドグラ・マグラ」のあらすじ
物語は、記憶喪失の男が目覚めるシーンから始まります。
記憶喪失の男
ある日ブーンという時計の音で男は目が覚めますが、自分が誰だかわからなくなっています。隣からは「なぜ私を手に掛けたの?」というような少女の声がします。
しばらくして若林鏡太郎という法医学の教授が現れます。若林教授は、今まで研究に当っていたが自ら命を絶った正木敬之教授の後任だと言います。
その若林教授に記憶を取り戻すため、研究所へ連れて行かれます。記憶を取り戻す事で隣の病室の少女も助かり、若林教授の研究も完成するとの事です。
凶悪な事件との関連
その研究が、実はある凶悪で不思議な事件に利用されたのだと教授は言います。
ある裕福な家に生まれた青年が結婚前夜に花嫁を手に掛け、さらにその遺体をモデルにして絵を書いていたという奇異な出来事があり、その事件の唯一の生き残りであるのが、この記憶喪失の男なのです。
ドグラ・マグラという書物
研究所に着いたら記憶を取り戻すための資料だとして、色々な書物を読まされますが、その1つにドグラ・マグラがありました。
その内容は呉一郎という主人公がブーンという時計の音で目覚める話で、まるで今の自分を見ているような気分になり、意識が混濁します。
すると何故か亡くなったはずの正木教授が出てきて、若林教授があなたを呉一郎に仕立てるためにその本を読ませた、というのです。
正木教授とのやりとり
正木教授にある絵巻物を見せられます。その絵巻物には、病室で会った少女にそっくりの女が描かれています。
この巻物には不思議な力があり、まずはどうなるか実験台にするために、呉一郎とその許嫁に見せたのだと、事件の犯人は自分なのだと正木教授は言います。
そしてふと男は気がつくと病室で寝ており、埃にまみれた新聞を発見します。
記事には正木医師自ら命を絶つと書かれており、その日付は正木と部屋で話をしていた時に見たカレンダーの日付の翌日でした。
結局真相はわからないまま
自分は誰なのか犯人なのか、はたまたタイムスリップしたのか、意識が混濁したまま病室に戻ります。
そうしたらまた相変わらず隣からは少女の声が聞こえてきます。
そして男の脳にはブーンという時計の音が聞こえており、それはいつしか読んだドグラ・マグラの本のラストシーンと同じだったのです。
感想
まずキャッチコピーである「精神に異常をきたす」ということは起こりません。
真相は分からないまま
精神に異常は起こりませんが内容は難解ですし、結局真相は分からないまま終わるので、物語の終わりはハッキリして欲しいという方には向かない小説でしょう。
一応主人公は呉一郎という青年だったというのが一般的な解釈ですが、それも作中では確定していません。
怪しくて魅力的な小説
それでも冒頭から始まる「胎児よ、胎児よ、何故躍る~」怪しいフレーズに興味を覚える方は多いと思います。
そして男が置かれている異様な状況にどんどん引き込まれていくと、圧倒的な物語の迫力から抜け出せなくなるかもしれません。
精神に異常をきたすというキャッチコピーに惹かれるような謎好きの方はぜひ読んで、色々な解釈を考えてみてください。