伊勢物語は平安時代に書かれた作者不詳の物語で、様々な恋愛模様が描かれているのが特徴です。主人公の男は実在した人物である在原業平(ありわらのなりひら)ではないかと言われています。
在原業平は平安時代の貴族であり、実際に色男として名を馳せた人物です。数々の女性たちと浮名を流し、そのプレイボーイっぷりは現代にまで語り継がれています。
今回はエンターテイメント溢れる伊勢物語から、有名なお話をご紹介します。
伊勢物語のあらすじ
伊勢物語は125段からなる短編集で構成されており、沢山の読み物があります。
初冠から始まる物語
伊勢物語のはじまりとして有名なのが初冠(うひかうぶり)です。
元服式を済ませた男が奈良の春日の里に鷹狩りに行き、その里にはたいそう美人で優美な姉妹が住んでおり、その姉妹を見て心が動転してしまった男は、着ていた狩衣(かりぎぬ)の裾を切り取り、その布に歌を書いて贈るのでした。
その時男はしのぶずりの乱れ模様の衣を着ており、紫草で染めた狩衣のしのぶずりの乱れ模様のように、あなた方を見て心が激しく乱れております、と書いたのです。
この時代の人は、少し見ただけの相手に恋文を贈るという行為を当たり前のようにしていました。現代の人間からしたらちょっと軽薄なように感じますが、昔の人は真剣だったのでしょうね。
古典のテストでも出る有名な芥川
ある男が高貴な女を長年かけて求婚し、暗い夜に紛れて女を連れ出しました。芥川という河のほとりに連れて行くと、女は草の上に降りてくる雨露に向かって「あれは何なの?」と問いました。
女は箱入りで世間を知らず、露がなんなのかが分からなかったのです。
そんな時、雷もひどく大雨が降ってきたので、蔵の中に女を押し込んで夜が明けるのを待っていました。
しかし鬼が来て女を一口に食べてしまいますが、雷の音が大きく男には聞こえず、夜が明けると女が居なくなってしまったという話です。
失うくらいなら「あれは露だよ」と答えてあげればよかったと男は後悔しています。
この話に出てくる鬼とは、女の親戚だとされていて、結局女は親戚によって連れ戻されたという訳です。
どこか切ない旅の話、東下り
ある男が自分は何の役にも立たないと思い、友人と東の国に旅をしに行きます。三河の国では、川が蜘蛛のように流れる様子から、橋を八つに渡せる「八橋」と呼ばれる場所に来ました。
男はそこでご飯を食べながら、都に残してきた愛する妻を想い、遠くまでやってきたものだと涙するのです。
また次に駿河の国では、これから自分たちが進む道が暗いことから心細く感じています。そして隅田川にまで辿り行き、渡し舟に乗るとみんなどことなく寂しそうな雰囲気をしているのです。
きっと都に想う人がいるのだろうと感じ、水面を飛ぶ鳥を見て「都の鳥よ、私の想う方は無事だろうか」と詠みます。
在原業平の京都を追われたときの様子を描いたのではないかとされています。
感想
源氏物語もそうですが、いつの時代も人の恋模様は興味深い対象だったことが分かりますね。そして登場する人がもれなくプレイボーイというのもなんだか面白いです。
平安時代の人は歌でコミュニケーションを取っています。現代人からしたら若干回りくどいような気もしますが、すぐに歌で返信する様子は頭の回転が速いのだなという印象ですね。
パッと詠んだ歌にサッと返信できることは、モテる要素のひとつだったのかなと思います。
古典の勉強にもなる伊勢物語を読んで、昔の人の恋愛模様を感じてみてはいかがでしょうか。現代にも通じる何かが発見できるかもしれません。