森鴎外の代表的な舞姫は、エリート官僚と踊り子との恋を描いた物語になっています。恋人と出世の間で揺れ動く主人公の手記という形で、ストーリーは展開していきます。
内容は知らなくても、作品名や作者である森鴎外の名前は知っている方も多いのではないでしょうか。今回はこの舞姫のあらすじを簡単にご紹介します。
舞姫のあらすじ
秀才の官史である太田豊太郎が、何年か過ごしたベルリンから戻る船の中で、回想録を書いています。森鴎外の舞姫はそこから始まります。
主人公が海外に留学
夫を早くに亡くした母の、唯一の支えとなっているのが息子の太田豊太郎です。
豊太郎は非常に秀才で、若くして大学法学部を首席で卒業した後に某省に入り、ベルリンに留学を命じられます。
ベルリンに来てからの数年間は豊太郎にとって、自由な大学生活であり、そこで過ごすうちに自分の機械的な人生に疑問を持ち始めます。
そうして歴史や文学といった、専門外の知識に関心を深めていくのです。
ある美少女との出会い
ある夕暮れの教会前で、お金に困って泣いているエリスという16、7歳の娘に出会います。
豊太郎は事情を聞いてお金の工面をしてやり、そこから踊り子エリスとの交際が始まるのですが、同じ日本人留学生から誤解されたうえに中傷され、それがきっかけで官史を免職されてしまいます。
同時期に母の死を知らされた豊太郎は、エリスだけが心の拠り所となります。
そんなとき親友相沢に新聞社の通信員の仕事を紹介してもらい、何とか生活ができるようになりました。
仕事か恋人かという選択肢
ある日豊太郎は相沢のはからいで、大臣の通訳として大きな役割を果たします。
そして相沢から1人の女に入れ込みすぎて、有望な将来を無駄にするなと説得され、豊太郎はエリスと別れる事を約束します。
しかしエリスはその頃、豊太郎の子供を身ごもっていました。
また大臣からも一緒に日本に帰らないかと誘われ、豊太郎は仕事とエリスとのジレンマで心労がたたり倒れてしまいます。
帰国する豊太郎
何とかエリスの元に帰った豊太郎でしたが、数週間意識をはっきりと保つ事ができないでいるうちに、相沢は事の全てをエリスに話してしまいます。
豊太郎が気がつくと、全てを知ったエリスは衝撃で発狂していました。
豊太郎はエリスの母に、エリスと生まれてくる子供のことを頼むと、生活に困らない金銭を渡し、泣く泣く帰国の途につく決心をしました。
そして相沢には感謝の気持ちと同時に、少しの憎しみを持ち続けることになるのです。
感想
この作品は女性、男性で感想が別れそうな気がします。私は単純に豊太郎はメンタルが弱い自己中心男にしか思えませんでした。
確かにこの時代、海外での生活は今よりも厳しいものだったでしょうし、エリートとして渇望されていたプレッシャーもあったとは感じます。
しかし結局すべてのことを親友である相沢に託して自分は日本に帰ってくるという、なんとも情けない印象を受けます。
エリスが生まれてくる子供の為に産着を縫っている場面が、ただただ悲しいです。
内容は全く共感できなかったですが(笑)、文章がとても美しく読み応えがあるので、ぜひ読んでみてください。
参考:森鴎外「舞姫」青空文庫