「十三夜(じゅうさんや)」は、樋口一葉(ひぐちいちよう)が明治28年に発表した小説です。明治の女性の悲哀を感じさせる物語となっています。
樋口一葉は、明治を代表する小説家です。その短い生涯で発表した作品は、どれも賞賛されているものばかり。
そんな樋口一葉が、明治の女性の姿を描いた「十三夜」の簡単なあらすじを紹介します。
樋口一葉「十三夜」あらすじ
物語は、主人公の女性が、実家に帰ろうかと迷っている場面から始まります。
お関の家出
主人公のお関は、上級官史の原田勇の妻となります。
彼女がまだ十七歳の頃、通りかかった原田に見初められました。ですが、彼女がまだ教養もなく身分も違うということで、両親は断ります。
それでも原田は諦めませんでした。大事にするからとせがまれて、仕方なく両親はお関を嫁に出すことになったのです。
しかし、息子の太郎を産んだ途端に原田は冷たくなり、お関はひどい仕打ちを受ける毎日でした。
そんな夫に耐えかね、お関は息子を残したまま実家へと逃げ帰るのです。
父の言葉とお関の決意
実家では何も知らない両親が、お関の帰りを喜んで迎えました。
しかし、なかなか帰ろうとしないお関の様子を、両親は次第におかしいと感じ出します。
そしてついに、彼女は帰郷に至った経緯を涙ながらに語るのでした。
話を聞いた母は、あれほど頼まれたから泣く泣く嫁に出したのにと、怒るのです。
だけど父は、身分の高い夫はそういうこともあるだろう、同じ泣くなら太郎の母として泣けと、彼女を諭すのでした。
お関自身も我が子のためと思えば夫の仕打ちも辛抱できると思い直し、再び原田の元へ戻る決意をするのです。
偶然の再会
婚家へ帰る途中、お関が乗った人力車を引いていたのは、偶然にも幼なじみの録之助でした。
お互い口には出しませんでしたが、二人は密かに惹かれ合っていた仲だったのです。
そこでお関は録之助の身の上話を聞きます。お関の嫁入り後、録之助は荒れていきました。
妻子にも逃げられ、後に娘はチフスで亡くなったのだそうです。
これまで転落の人生を送ってきて、今ではその日暮らしの無気力で投げやりな生活を送っていると、録之助はお関に話したのでした。
別々の道へと歩き出す
久しぶりの再会に、お関と録之助はとても驚きます。しかし、それぞれ思うことはありましたが、その全てを口にすることはできません。
言いたいことはあるけれど察してほしいと、お関は録之助に言います。
お互いが全く別の道を歩んでいることを知り、二人は静かに別れていくのです。
胸に哀愁を秘めつつ、月光が照らす十三夜の夜道を歩き出すのでした。
感想
今の言葉にすると、モラハラ夫に嫌気が差した妻が、実家に逃げ帰るということですね。
自分勝手な夫
自分からぜひ嫁にきてくれと頼み込んでおいて、子供が生まれたら邪険にするなんて、本当に腹立たしいと思います。
教養もないからと、最初は断った両親に、原田は自分から頼み込んだのですよ。
にもかかわらず、嫁にきたら不作法だ不器用だと責めるなんて……。
男尊女卑の時代
ただし、この時代は原田のような男性は珍しくなったのかもしれません。
実際お関は、父親に諭されて夫の元へ戻ることを決めるのですから。
同じ男である父親がそういう態度だということは、男から見たらなんでもないことだったのでしょう。
しかし、母親は娘の境遇をとても悲しんでいます。この両親の差が、この時代の男女を物語っているような気がします。