孤島の鬼のあらすじ「男を想い続ける男」

あらすじ
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孤島の鬼は、昭和四年から昭和五年にかけて雑誌に連載されていた、江戸川乱歩の長編推理小説です。

かなり過激な題材(同性愛や異形の人間など)を扱っているためか、あまり一般には知られていない作品のように思います。

そんな江戸川乱歩「孤島の鬼」とは、一体どんな内容なのでしょう。簡単なあらすじをご紹介します。

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江戸川乱歩「孤島の鬼」あらすじ

物語は、主人公が自分の身に起こった陰惨な事件を語るところから始まります。

蓑浦(みのうら)はまだ30歳にも満たない年齢であるのに総白髪となっており、彼の妻の体には大きな傷跡があります。その理由を説明するため、蓑浦は自分の経験を本にまとめたのだと語るのです。

初代の系譜図

過去、蓑浦は同僚の初代と恋に落ち結婚を決意します。結婚指輪を贈られた初代は、自分は何もお返しできるものを持っていないからと、命の次に大事だという一枚の系譜図を蓑浦に渡しました。

初代は幼いころに実の両親に捨てられ、義理の父母のもとで大切に育てられたのでした。

拾われた時に唯一彼女が持っていたのが、その系譜図だったのです。しかし、それは重要な部分が破けていたため、やはり彼女の身元は分かりませんでした。

恋のライバルが登場

二人の幸福も束の間、初代に熱烈な求婚者が現れます。それは、蓑浦の先輩である諸戸という人物でした。

優れた経歴を持つ美男子ですが、蓑浦は彼の秘密を知っていました。諸戸は同性愛者だったのです。

彼が初代に近づいたのは、蓑浦との仲を引き裂くためだと疑いました。諸戸の想い人は蓑浦だったからです。そんなある時、初代は自宅で何者かによって亡き者にされたのでした。

犯人への復讐を誓う蓑浦は、探偵である友人の深山木に調査を依頼しました。ですが、後日、深山木までもが不可解な亡くなり方をすることとなります。

明らかになる異形の存在

深山木が亡くなった現場に諸戸の姿を見た蓑浦は、もはや彼が犯人だと疑わざるを得ませんでした。

深山木の所持品には、ある双生児の片方が書いた日記がありました。日記によって、この事件に関与していると思われる、異形の世界の存在が明らかになるのです。

日記は双生児の女性の方が書いたもので、片方の男の発情した様子などが鮮明に書かれています。

志摩の孤島へ

初代の出生の秘密も諸戸自身のことも、志摩の孤島に真実があることが判明します。蓑浦と諸戸は、共にそこへ乗り込むことにしました。

実はその島を支配していたのは諸戸の父である丈五郎で、彼が様々な異形の存在を創りだしていたのでした。

日記の著者も、実は丈五郎によって、人為的にシャム双生児にさせられてしまったのです。他にも様々な障害を持った人たちがいます。

生き地獄へと

初代の系譜図には、財宝の在り処が隠されていました。そのため彼女は狙われることとなり、それに気付いた探偵も同じ目に遭ったのです。

そして丈五郎を制止すべく、蓑浦と諸戸は行動を開始することに。

やがて初代の系譜図の謎を解いた二人は、地下道を発見します。だけど、道に迷って行き場をなくし、欲情に耐え切れなくなった諸戸は、蓑浦を襲おうとします。

この状況は、蓑浦にとって生き地獄のようでした。そこへ島の老人・徳さんが現れ、彼の話で全ての秘密が明らかになります。

事件の解決

双生児の女性の方は初代の妹・緑であること、諸戸は誘拐されてきた子であり、丈五郎の実子ではなかったことを語る徳さん。

なんとか出口を見つけ地上へ出るころには、すでに刑事が到着していて、事件は解決へと向かいます。

地上に出られた蓑浦と諸戸は一気に老けこんでいました。その後諸戸は病気で亡くなりますが、息を引き取る寸前まで蓑浦の名前を呼び続けていたのだそうです。

感想

蓑浦が総白髪になったのは、狂気の諸戸に追いかけられたことが原因であることは明白です。それに気付いた諸戸は苦しんだでしょうね。

諸戸の苦しみ

自分の想いが好きな相手を追い込んだのだと、諸戸は苦しんだことでしょう。それにより、諸戸が亡くなることに繋がったのかもしれません。

しかし、蓑浦は諸戸の気持ちを知っていながら友人として付き合っていました。諸戸ほど優秀でカッコイイ男性に好かれることに、優越感を抱いていたようです。

ただ、諸戸からしたら、真綿でじわじわ締められているような感じだったのではないでしょうか。

蓑浦の態度にちょっと……

結果、気持ちを抑えられなくなった諸戸は、お酒に酔った際、蓑浦に想いを遂げようと迫ったことがあります。けれど、蓑浦からは全力で拒否されます。

そのときに、「せめて好きでいさせてくれ」という諸戸の言葉が切ないです。

ちなみ蓑浦は事件後、双子の片割れでもあり初代の妹でもあった緑と結婚して財宝も手に入れます。意外にちゃっかりしているような気がします。

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