羅生門は芥川龍之介の有名な短編小説で、黒澤明監督によって1950年に映画化されています。
映画のタイトルは「羅生門」ですが、原作は羅生門と、同じく芥川龍之介の短編小説「藪の中」が題材になっています。
映画は人間のエゴイズムを追求した作品で、巨匠「黒澤明」の名前を世界に知らしめたきっかけになりました。
今回は小説「羅生門」のあらすじを簡単にご紹介します。
芥川龍之介「羅生門」のあらすじ
羅生門は読書感想文でも出される課題として有名で、主人公の善悪に対する考え方の変化に注目するべき作品だと言えます。
下人がたたずむ羅生門
天変地異の災害が平安京を襲っていた頃、夕暮れの羅生門には雨宿りする人が一人もいません。
それどころか羅生門は餓死者の屍が横たわる場所でした。しかしそこに一人の下人が雨宿りに来ます。
男は数日前に主人に解雇され途方に暮れていたのです。いっそ盗人になろうかと思うものの、その勇気が出ず迷っていました。
下人は羅生門で夜を明かそうと楼の上にハシゴであがると、そこには誰かが火を動かしています。
屍の中を蠢く謎の老婆
楼内には無数の屍が横たわっており、その中で火を持ちながら、老婆が遺体の頭から白髪を一本ずつ引き抜いているのです。
今まで屍と夜を明かさなければならない怖さがあった下人からは恐怖が消えて、老婆に対して怒りがこみ上げます。
また、下人は老婆が白髪を抜く理由が分からずにいましたが、横たわる遺体の髪を抜くなんて事は許されない事だと感じたのです。
さっきまで盗人になろうとしていた気持ちは消えていました。
老婆の話を聞く下人の変化
下人はハシゴを上がると老婆に問い詰めました。すると老婆はかつらを作るために髪の毛を抜いている事を告げます。
「ここにいる人らは皆そうされても仕方のないようなやつらだ。」
自分が抜いた髪の女は生前、蛇の干物を魚の干物だと嘘をついて売っていた女なのだと言いました。
しかしこの女を悪いとは思っていない、そして自分がしている事も悪いことではないと開き直ります。
夜の闇に消えていく下人
それを聞いた下人はある勇気が湧いてくるのでした。
「それならば俺が引きはぎをしようとも恨むまい。」
自分もそうしなければ飢えてしまうのだと言って、老婆の着物を剥ぎ取ったのです。
そうして下人はハシゴを下りて夜の闇に消えていきました。その後の下人の行方は誰も知りません。
感想
善悪が揺れ動く主人公の気持ちが、老婆との会話で変化する様子がとても興味深いと言えます。
キレイごとでは済まない現実
現代の日本では下人のような状況に立たされることはありませんが、何かがきっかけで気持ちが吹っ切れたりという状況は、誰もが経験しているでしょう。
そしてそんな経験の中には、キレイごとで済まされないことも存在します。羅生門は人間の生きるための悪というものを描いた作品となっています。
様々な状況の中で、その人にとって何が善で何が悪なのかは、見る角度によって変わるのだということでしょう。
映画のリメイク
ちなみに映画の羅生門は、1997年「MISTY」というタイトルでリメイクされています。
出演は豊川悦司さん、天海祐希さん、金城武さんと豪華ですが、あまり話題になっていません。
ただ天海祐希さんがとてもセクシーな役を演じられているので、天海さんファンは必見ですね。