昭和23年に雑誌で発表された「人間失格」は、連載の最終回が掲載される直前に太宰治が心中したことで話題になった作品です。
そのため、この作品には「作者の遺書のような想いが込められているのではないだろうか」と言われてきました。
しかし、後に遺族が公表した太宰の原稿には、何度も書き直した様子があることから、フィクションであると考えらます。
そんな人間失格のあらすじとは、一体どんな内容なのでしょう。
太宰治「人間失格」 あらすじ
物語は、ある男の写真を三度見たと語る場面から始まり、そして大庭葉蔵の手記としての流れになっていきます。
人間への恐怖からの道化
大庭葉蔵は人間というものに対して、恐怖と難解さを感じており、それ故にいつも孤独を選んでいました。そのため、幼い頃から自分の感情を他人に悟られないように、道化を演じてきたのです。
しかし、中学時代にクラスメートの竹一に演技であると見破られそうになり、非常に恐怖を感じます。
その後、高校に入学した葉蔵は、人間への恐怖を紛らわすために酒とタバコに溺れ、人妻との心中未遂を起こすなど、生活は荒れていきました。
束の間の幸福
やがて葉蔵は家出をして東京に行き、その後も女性に助けられる生活を送ります。だけど、ヨシ子と出会い、次第に彼は変わっていきました。
毎日浴びるように飲んでいた酒も断つと約束し、葉蔵はヨシ子と結婚することを決めます。
幸せを感じていた葉蔵でしたが、ある時ヨシ子は葉蔵の仕事関係である商人によって乱暴をされてしまうのです。
ヨシ子が犯されたことに、大きなショックを受けた葉蔵。再び酒に手を付け、アルコール中毒さながらに飲み始めたのです。
再び荒れ狂った生活へ
そしてヨシ子が持っていた大量の睡眠薬を見つけて、葉蔵は自殺未遂を起こします。
一命は取りとめたものの、その後も彼の身体はどんどん衰弱していきます。ある夜、血を吐いたので薬を貰いに行くと、そこでモルヒネを処方されます。
その効き目に味を占め、ついにはモルヒネ中毒に陥ってしまいました。やがて高額なモルヒネを買うことができなくなり、ツケで貰いつつ薬屋の妻とも関係をもつようになる葉蔵。
自分の犯した罪に耐え切れず、葉蔵は実家に状況を説明した手紙を送ります。すると家族から連絡を受けた親戚と友人が現れ、葉蔵を脳病院へ連れて行きました。
人間失格と悟る
サナトリウムへ行くと思っていた葉蔵は、脳病院に連れて行かれたことで、自分がおかしい人間だというレッテルを貼られたのだと悟ります。
自身が廃人となったことを自覚するとともに、もはや人間失格であると確信するのでした。
退院後は家族に与えられた屋敷に、六十に近い老女を世話役につけられ、その老女に関係を強要されながら過ごします。
そして27歳の今の自分には、幸せも不幸もないのだと実感するのでした。
青空文庫:太宰治「人間失格」