金閣寺は三島由紀夫の代表作である長編小説です。実際に起こった金閣寺の放火事件を題材として描かれたこの物語は、国内だけでなく海外でも評価の高い作品となっています。
それでは三島由紀夫「金閣寺」のあらすじを簡単にご紹介します。
三島由紀夫「金閣寺」あらすじ
物語は、金閣寺の美しさに惹かれる主人公の告白を綴っていく形で進みます。
美の象徴である金閣
成生岬の貧しい寺で生まれた溝口は、僧侶である父から金閣ほど美しい物はないと聞かされて育ちました。
何度も繰り返し聞くうちに、溝口はまだ見たことのない金閣を、完璧な美の象徴として思い描くようになります。
生まれつきの吃音もあり非常に内向的な性格の彼は、美しい有為子という娘に軽蔑されたことから、女と自分との間に大きな壁を感じながら生きていました。
病弱だった父は自分の身が長くないことを悟り、溝口を金閣に預けることにします。
溝口の友人たち
徒弟(見習い)生活の中で、溝口とは対照的にとても明るい性格の鶴川という青年と出会い仲良くなります。
ある日、彼らは南禅寺の茶室で一人の美しい女性を目にし、溝口は彼女に有為子の姿を重ねました。
やがて戦争は終わり、溝口は大学に入学。そこでは内反足の障害を持つ柏木と出会います。
柏木は高度な知識を持った青年で、自分の障害を逆手に取って女をうまく扱う技を持っていました。
そんな彼は溝口に女性を紹介しましたが、それは以前に茶室で見たあの女性だったのです。いざ抱こうとすると、目の前に金閣の幻影が表れ、抱くことができませんでした。
そして鶴川は事故で亡くなります。
老師との確執
ある時溝口は、女を連れて歩く老師(金閣寺の住職)に偶然出会います。それを尾行されたと勘違いした老師とは、次第に関係が悪化していきました。
ゆくゆくは後継にと考えていたが、もうその気はないと通告されてしまいます。
それを聞いた溝口は、柏木から借金をして寺から出奔します。荒れる舞鶴湾の海を眺めるうちに、金閣を焼かねばならないという想念が浮かびました。
しかし、由良の宿で不審に思われてあえなく金閣に連れ戻されたのでした。
金閣の放火と溝口の決意
後日借金のことで寺に来た柏木と口論になり、さらに鶴川が亡くなったのは失恋による自害だったことを知ります。
この世界を変貌させるのは認識だと説く柏木に対して、この世界を変貌させるのは行為なんだと反論します。
そしてついに、金閣を放火する準備を整えました。着火して、自分もこの炎に包まれ命を絶とうとしましたが、最上階の扉がどうしても開きません。
拒まれていると感じた溝口は戸外に飛び出し、山の方へ逃げました。そして火の粉の舞う夜空を眺めながら、生きよう、と思うのでした。
感想
溝口はずっと金閣寺に執着しています。女性と関係を持とうとすると金閣寺の美しさが邪魔をするのです。
コンプレックスの塊のような主人公にとって、金閣寺の美はきっと完璧なのもであり、自分を縛る存在だったのだと思います。
憧れでもあり、逃れられない存在の金閣寺を燃やすことで、その美しさを永遠に自分だけのものにしようとしたのでしょうか。
三島由紀夫の金閣寺は難解なので読み進めることがけっこう難しいと感じます。それでも文体の美しさは絶賛されている作品ですので、機会があったら読んでみて下さい。