どこか懐かしい気分に浸れるジブリ映画「おもひでぽろぽろ」のラストは、色々と解釈が分かれることで有名です。
映画の雰囲気のままハッピーエンドだったのか、本当は別の意味があったではないかと、ファンの間では囁かれています。
今回はそんな「おもひでぽろぽろ」の簡単なあらすじと、ラストの解釈についてご紹介します。
おもひでぽろぽろのあらすじ
作中では11歳の頃のタエ子の想い出と、27歳のタエ子の二重のストーリーが描かれていきます。
自分を心配する母親が持ってきた縁談話を断るタエ子は、東京生まれ東京育ちであり、田舎に強い憧れを持っています。
そんな中タエ子は休暇を貰い、姉の夫の親戚の家がある、山形県の高瀬に旅行に出かけます。
しかし山形行きの夜行列車に乗ると、小学5年生の頃の思い出が次々と蘇ってきて、気が付くと小学5年生の自分を連れたまま高瀬に到着します。
田舎に憧れていたタエ子は、畑仕事に新鮮な気持ちを感じながら、滞在先の息子のトシオや農家の人たちと、様々な農作業を通じて交流を深めていきます。小学5年生の頃の感傷に浸りながら。
充実した日々の中、しっかりした目標を持っているトシオのことを意識し始めますが、おばあちゃんに「トシオの嫁になってほしい」と言われたことで、思わず家を飛び出します。
タエ子は田舎に憧れていただけで、本当のことは何も理解していなかったことを自覚するのです。
そのまま素直になれず列車に乗り東京へ帰ろうとしますが、車中で様々な想いが駆け巡り、結局トシオの元へ戻ります。そんな2人を小学5年生の自分と同級生たちが祝福します。
ラストシーンの意味とは?
ラストシーンでは結婚に対するタエ子の気持ちがはっきりしないまま、トシオとトシオの家族に見送られながら東京に帰ることになります。しかし列車に揺られながらタエ子は窓の外を見ながら何かを思っている様子です。
そしてタエ子の表情が急に変わり、列車を降りて公衆電話からどこかへ電話を掛け、そしてトシオが車で迎えにきます。
その後ろから思い出だった過去のタエ子と、クラスメイトたちが2人に手を振って見送ります。
このシーンはまさにタエ子がトシオとの結婚を決意して、トシオと結ばれたことを表しているのでしょうか。
しかし高畑勲監督の当初の考えでは、タエ子が列車に乗って終わりというエンディングでした。
しかしプロデューサーの鈴木敏夫さんが、もう少しなんらかのアクションが欲しいと監督に要望した結果、こういう形に変更になったのだそうです。
それに結婚について前向きに考えていたわけではなく、ただトシオのことをもっと知りたいという気持ちが、あのUターンに繋がったということです。
しかも最終的には上手くいかなかったというような発言をしているので、映画のラストはファンサービスということでしょう。ちょっと残念ですね^^;
参考:asahi.com(朝日新聞社):「女は農家の嫁になれ」と監督が言った?
おもひでぽろぽろのトリビア
同じジブリ作品である「平成狸合戦ポンポコ」のなかに、実はタエ子が登場しています。妖怪大行列の中に、少女時代のタエ子が空を飛んでいるというシーンがあるのです。
このシーンに関しては他のジブリ作品であるトトロやキキ、紅の豚のポルコなどの人気キャラクターも登場しています。
こういうファンサービスはとても嬉しいですね。ぜひ平成狸合戦ぽんぽこを見る機会があれば、他の人気キャラクターも探してみてください。
参考:高畑勲監督作品『平成狸合戦ぽんぽこ』制作裏話 – 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記
まとめ
「おもひでぽろぽろ」は、タエ子が小学生時代の思い出を振り返り、現在の自分に置かれた状況を見つめ直し幸せを掴むという物語だと言えます。
都会という社会の荒波に揉まれてきたタエ子が、小学校5年生の自分を連れて旅をしている様子は、過去に取り付かれているようにも感じます。
だけど、最後は小学5年生の自分に別れを告げて、現実と見つめ合い前に進む場面が印象的です。
ラストの小学5年生のタエ子が少し寂しそうに見えるのは、大人になってしまったことで、過去の自分と決別したように感じたからではないでしょうか。
大人になったからと言って悩みはつきませんし、むしろ大人になったからこそ幼い頃より悩むことが増えてきます。
この作品は過去の自分ともう一度対面して、自分の未来を考えて進んで行くということを表しているのではないでしょうか。